「鍵屋甘味処改」シリーズ
読みやすく、シリーズによってはわりとハマる「集英社 オレンジ文庫」は2015年から創刊したライト文芸レーベル。
同じく集英社のコバルト文庫から派生したものらしい。コバルトが最近ファンタジー要素と歴史系が強めで、オレンジ文庫は、もう少し一般よりでサスペンスや謎解き系が多い。もう一つが乙女系ばかり(マンガでいうところのTLジャンルにあたると思われる)のシフォン文庫もあるようだ。
オレンジ文庫レーベル創刊時に発行された5作品中3作品全部読んでいた…。主人公が10代が多いので、わりとピュア系。。。
こちらの下鴨アンティークもその5作品のうちの1作品。
3作品とも、主人公かその相手どちらかが親とうまくいっていなかったり亡くなっていたりして、祖父母と仲良かったり、育てられたりしている感じがするな・・・
(もう1作品はまだ読んでる途中、すでに完結はしているけれど)
『鍵屋甘味処改』シリーズもちょっとそんな部分もあったり。
1作目あらすじ
鍵にまつわる日常ミステリー。
天才鍵師×開かない鍵。鍵が導く日常ドラマ。
冬休みに突入した午後、自分の出生にまつわる秘密を知ってしまった女子高生・こずえは母を一方的に責め、衝動的に家を飛び出した。ひょんなことから鍵屋を営む鍵師・淀川と知り合い、年齢を偽って助手として彼の家で居候することに…。
いつものことながら、ちょっとネタバレあり。
16歳の高校生が家出して、24歳の鍵師の家に居候する 10日間の物語、が1作目。
母ひとり子ひとりで育ち、家に男性がいる暮らしをしたことがない女子高生が大人の男性との暮らしというのは、普通に考えてあり得ないけれど、お話だと思って、、、。
淀川の「こずえ=捨て猫」を拾い、一時的に預かったような感覚でこずえを見ている視点は結構面白い。
2作目からは、母親である夏帆と和解したこずえが高校に通いつつも週末や長期休みに鍵師の助手兼となりの和菓子屋のお茶係として居候する。
ここでもこずえの行動に「猫」を感じる淀川。
そして本当に猫が鍵屋にやってくる。
それは、家出中の女子高生こずえが、鍵師の淀川宅に助手として居候し始めたばかりの頃のこと。
高熱を出して倒れた淀川宛に宝箱の開錠依頼が舞い込んだ。しかも納期は翌日。
淀川の代わりに鍵を開けようと奮闘するこずえだったが…?
割と時系列がわかりにくくて、前半の部分はもしかして、こずえが家出していた頃の話を振り返っているってこと、かな?でも、居候してすぐだよね??んんん???とちょっと疑問にも思ったり。
全体的にはこずえが鍵屋に通うことが当たり前になってきて、、、という部分。
あと、初めての「鍵ミュージアム」へのお出かけ!も!
ゴールデンウィーク、こずえは淀川の鍵屋を手伝っていた。謎めいた依頼が入り、こずえたちは『鍵屋敷』へ向かうことに。
そこには若手の鍵師が集められていた。そして屋敷中の鍵を開け、コインを集めるという奇妙なゲームが始まり…?
この3作目はちょっとファンタジーも入っているので、同じシリーズでもちょっと違う感じ。結構唐突な感じではあるけれども…淀川のルーツである「ばあ様ことお銀さん」の物語が鍵ミュージアムから再び。
奇妙なゲームも一応これまでの物語とつながりがある。
淀川弟の多喜次が登場!ついでに兄、父や祖父に共通してみられる名前に「嘉」という漢字が使われていないことを実は気にしていた多喜次!でも、ちゃんと名前の由来を知れて、喜べてよかったね。
今さら淀川と祐雨子の関係が気になるこずえ。折悪しくテスト前で、鍵屋への出入りを禁じられてしまう。そんな中、こずえが通う高校のプールに不審物が投げ込まれる事件が起きる。鍵を開けられた形跡があり、鍵屋として淀川が呼ばれ…?
そんなこんなで、3作目の最後の方で淀川への恋心に気づいてしまったこずえは、これまで気になっていなかった人物が気になるようになる。
読んでいる方も、あまりにも自然な流れで話が進むし、どう見ても淀川もこずえのこと好きじゃないか、という色眼鏡で見てるから余計に、ああ、そういえば、、、隣の和菓子屋さんの娘で淀川の幼なじみの祐雨子(4作目画像の着物と袴の女性)って改めてどういう関係なのか、ってこちら側も半分スルーしてたな。。。
幼なじみとはいえ、20代にもなってそこまでじゃれつくのか、、、と言われればないと思うけど、人との距離を取ったり、人の気持ちを推し量ることが下手な淀川なら、祐雨子が幼なじみであるということを利用して距離を詰めることも可能か。。。(苦笑)
テストなどを終え、鍵屋へ顔を出したこずえ。祐雨子のことは気になるが、久々に淀川と会えてうれしい。そんな中、淀川の元カノが現れる。過去に苦しむ淀川と、彼を見守るこずえは……? シリーズ完結!
まだまだ、祐雨子と淀川の関係が気になりつつ、ヤヤコシイことに高校生の頃に付き合っていたという元カノジョまで登場するし、こずえ大混乱。
祐雨子は、高校生の頃に淀川に告白しているけれど、その頃の淀川はある意味で女性不振に陥っていたので、その告白自体を真に受けていなかったからさくっと断られてしまう。でも、幼なじみの鍵屋の隣、実家の和菓子屋で卒業後働いている時点で、普通に考えて吹っ切れてないままこじらせてしまい20代半ばになってしまったような。。。
改めて、淀川から「大切な友人だ」と言われ、高校時代から吹っ切れてなかったことを祐雨子自身も改めて自覚できてよかったなーと思う。
このシリーズのなかで、一旦は「事実から逃げた」こずえが、「事実に向き合う」ようになるこずえの姿がたくましい。そして、自分を救ってくれた人を救いたいという思い。もはやこれは愛!!
そして、そんなこずえを見守り、信じる母親である夏帆も本当に素敵だと思う。高校生の娘が誕生日でもある大晦日に親と帰省せずにまだ彼氏でもない鍵屋にいてるってな(苦笑)
そんなこんなで淀川もこずえのことが好きで一緒にいたい人だということを確信した5作目。
おそいけど、、、でも20代半ばの人間で、相手は8歳年下で弟と同じ年でしかも現役の高校生だとしたら、いくら好きでも恋愛の好きとは違う路線から考えてしまうのは、普通かも。
淀川が以前、夏帆に「未成年には手を出さない」と言っている手前、高校卒業までちゃんと待ったし、ただ付き合うとか生ぬるいことじゃない!ところにオトコマエ!!を感じる。こずえ高校卒業しても未成年だけど、進学せずに鍵師見習いになることに決めたみたいだし。
最後は、ハッピーエンドで幸せな気持ちにもなる
けれでも、いやいや、「これから」みたいな書きぶりじゃないの?違うの?
またしても色々調べてみたら、
梨沙先生のサイトに完結後のショートストーリーが掲載されている
まったく絵が出てこなかった早川煌のラフスケッチもあり
ショートストーリーは、一緒に暮らし始めて1か月、4月ぐらいのお話。
お互いに好きであるという感情を隠す必要がなくなった分、 淀川さんの本編とのギャップがカワイイ。
そして、続編は!?
って思ったら、スピンオフでお隣の和菓子屋さんが舞台の物語が…こっちは、祐雨子を幼いころから想う淀川の弟でありこずえと同じ年の多喜次が高校卒業後に和菓子屋に住み込みながら修行をするところから、のシリーズが出ていた。
時系列でいくと『鍵屋甘味処改』のその後。
祐雨子の視点からも色々と見れるのかもしれないな~という淡い期待。
→読了!
そして、シリーズ通して、
読むうちに気になったのがこの2軒の建物を誰も図面には起こしてない!!
気になったので、これまでの梨沙先生の文字描写とねぎしきょうこ先生のイラストと挿絵から推察してみようかな。。。いつも想像できそうで想像できないから、頭が混乱するだよなー
ちなみにこういうこと考える人って自分だけじゃないのね、と安心したサイト